タバコ副流煙の受動喫煙、肺がんリスク「ほぼ確実」から「確実」へ|受動喫煙の悪影響と健康被害が明らかに

2016年8月31、国立研究開発法人国立がん研究センター(以下、NCC)は、受動喫煙による肺がんのリスクを、これまでの「ほぼ確実」の評価から「確実」へと改めることを発表しました。

NCCはこの発表において、タバコ副流煙の受動喫煙による被害を受けている人の肺がんリスクは、受けていない人と比べて1.3倍になる、と述べています。

これにともない、NCCが発表している「日本人のためのがん予防法」の「喫煙」の項目についても、その文言が改正されました。

これまでの「他人のたばこの煙をできるだけ避ける」という文言から「他人のたばこの煙を避ける」という明確な指針に変更されています。

国立の研究機関が、タバコ副流煙の受動喫煙による健康被害について、これほどまでにはっきりと声明を発表することは初めてであり、今回のNCCの発表は大きな波紋を起こしました。

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事態は、NCCとJTの論争へと発展

NCCによる、「受動喫煙は明確に肺がんリスクを増加させる」との研究発表。

それを簡単に認めるわけにはいかない立場にあるのが、日本のタバコ産業の頂点に君臨する、日本たばこ産業株式会社「JT」です。

「JT」は、上述のNCCの発表を受けると、即座にNCCの研究に対する懐疑的な姿勢を表明しました。

JTは、本研究結果だけをもって、受動喫煙と肺がんの関係が確実になったと結論づけることは、困難であると考えています。
受動喫煙を受けない集団においても肺がんは発症します。例えば、今回の解析で選択された一つの研究調査でも、約5万人の非喫煙女性中の受動喫煙を受けない肺がん死亡者は42人であり、受動喫煙を受けた肺がん死亡者は46人でした。肺がん等の慢性疾患は、食生活や住環境等の様々な要因が影響することが知られており、疫学研究だけの結果をもって喫煙との因果関係を結論付けられるものではありません。

NCC発表に対するJTコメント

JTの主張は、肺がんリスクの増加は生活習慣などの様々な要因が絡んでおり、受動喫煙だけに焦点を当てて「肺がんリスク増」の結論を導くことは誤りである──というものです。

このJTのコメントに対し、NCCは異例とも言える「反論」を発表しました。

まず、JTのコメントにある・・・
「受動喫煙を受けない肺がん死亡者は42人」
「受動喫煙を受けた肺がん死亡者は46人」
という文言について。

NCCはこれを、「論文中で最もリスクが小さいデータを恣意的に抽出している」と指摘しています。

また、このデータを持ってして「肺がんリスク増加の因果関係を証明できない」とするJTの主張には論理的な誤りがあるとして、次のように指摘しています。

受動喫煙を受けた群と受けなかった群では分母の人数が異なるため、分子である死亡者数を単純に比較しても意味がない。さらに、受動喫煙を受けた群と受けなかった群とでは年齢や地域の分布が異なる可能性があるため、それらの要因を調整した比較をしなければ研究として成り立たない。

NCCによるJTコメントへの見解

NCCのJTに対する反論は、これのみではありません。
JTのコメントのほぼ全文に対して、反論を展開し、自身の研究の妥当性を強硬に主張しています。

こうしたNCCの強気な姿勢は、前述したとおり、まさに「異例」と呼ぶにふさわしいものであり、自身の研究に対する自信のあらわれとも言えるでしょう。

受動喫煙による肺がんリスクの増加について

冒頭で述べたとおり、NCCは「受動喫煙の被害を受けている人の肺がんリスクは1.3倍」と結論づけています。

しかし、この1.3倍という数値は、あくまで「平均値」です。
つまり、受動喫煙を受けている時間が長ければ長いほど、肺がんのリスクは増加していきます。

今回NCCが研究対象とした論文の中には、「1日に3時間以上」など、長時間の受動喫煙を受けた男性の肺がんリスクは5.29倍になるという研究結果を述べているものもあります。

現在、職場や自宅などで、長時間にわたって副流煙に晒されている人は、何らかの予防策を講じることを検討すべきと言えます。

NCCが用いた研究手法「メタアナリシス」とは

NCCは、「タバコ副流煙による受動喫煙の影響」を調査するにあたって、「メタアナリシス」という研究手法を用いています。

メタアナリシスとは、複数の論文を解析・統合して、信頼できる結論を導き出す分析方法のことです。

今回、NCCは9つの論文を分析対象としていますが、この9つの論文はNCCが恣意的に選出したものではなく、メタアナリシスの国際的なガイドラインによって選び抜かれたものであるとのことです。

受動喫煙についての基礎知識:Q&A

受動喫煙はなにが問題なの?

たばこの煙は、フィルターを通して排出される「主流煙」と、フィルターを通さずに排出される「副流煙」の二種類があります。
副流煙はフィルターにより有害物質が除去されないため、主流煙の何倍も有害物質の量が多いとされます。

受動喫煙の問題は、「タバコを吸うことによる利益」を一切受けていない人たちが、「タバコを吸う人が周囲にいる」というだけで、この副流煙の被害に晒されてしまう点にあります。

タバコの副流煙の受動喫煙はマスクで防げる?

ドラッグストアなどで市販されている使い捨てマスクなどでは、副流煙を防ぐことはできません。
副流煙に含まれる有害物質を除去するには、「ガスマスク」などの専門的な装備が必要です。

空気清浄機で副流煙の有害物質を除去できる?

空気清浄機で除去できる有害物質は「粒子状」のものが主であり、「ガス状」の有害物質の除去は難しいと言われています。
そして、タバコの副流煙の有害物質の多くは「ガス状」です。
よって、空気清浄機の設置は受動喫煙の防止策として、あまり効果的でないと考えられます。

空気清浄機は、「タバコの臭い」を除去する効果はあっても、有害物質を除去する効果には乏しいと考えたほうが無難でしょう。

受動喫煙から身を守るためにできること

職場などで受動喫煙の被害を受けている場合は、まずその職場の責任者に、分煙などの防止策を行うように要請しましょう。

労働安全衛生法により、雇用主には労働者の健康を守るため、受動喫煙を防止する義務があります。

雇用主に直接要請することが憚られる場合は、厚生労働省から委託を受けている下記の相談窓口などを利用することを検討してみてください。

一般社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会

家庭内にて受動喫煙の被害を受けている場合は、やはり、「タバコを吸っている家族に禁煙をしてもらう」ことが、家族の健康を守るための最も有効な手段です。

現在では禁煙は、医師などの専門家の支援を受けさえすれば、難しいものではなくなりつつあります。

受動喫煙の被害を受けている人、あるいは家族を受動喫煙の被害に晒してしまっている人は、ぜひとも一度、そうした専門家に相談をしてみてください。

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