放射線の健康被害Q&A:レントゲンやCTの医療被曝の影響は?|安全な放射線量の基準や被曝の症状について

東日本大震災により引き起こされた、福島の原子力発電所(原発)の事故以来・・・
放射能や放射線による汚染や健康被害を懸念する人は、非常に多くなっています。

特に、医療機関におけるレントゲン撮影やCT検査などに、不安感を持つ人が多いようです。

健康診断での胸部レントゲン撮影や、胃部レントゲン撮影。
精密検査や人間ドックにて実施されるCT検査。
歯医者さんが行う、歯科用レントゲン撮影。

このような、私たちが医療機関にて経験する放射線の被曝(ひばく)を、「医療被曝」と言います。

この「医療被曝」が健康にもたらす影響は、一体どの程度なのでしょうか?
安全な放射線量の具体的な基準値は、いくつなのでしょうか?

この記事では、放射線を被曝することによる健康被害や、放射線にまつわる様々な事柄について、詳しく解説をしていきたいと思います。

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放射能と放射線の違いは?

あまり区別されずに使われることの多い「放射能」「放射線」という言葉。
しかしこの二つの言葉には、明確な意味の違いがあります。

「放射能」は、放射線を出す「能力」を指し示す言葉です。
「放射線」は、放射能を有する物質、すなわち「放射性物質」が発する電磁波や粒子のことを指します。
私たちがレントゲン撮影などで浴びるものは、「放射能」ではなく「放射線」です。

なお放射線には、次に示すような様々な種類があります。

放射線の種類

・アルファ(α)線
・ベータ(β)線
・ガンマ(γ)線
・エックス(X)線
・中性子線

放射線をあらわす単位は?

放射線の単位には、Gy(グレイ)、あるいはSv(シーベルト)が用いられることが一般的です。
この記事では、放射線の単位をmSv(ミリシーベルト)で統一しています。
mSvは、Svの1000分の1をあらわします。

健康被害をもたらす放射線の被曝量はどれくらい?

厚生労働省は、健康被害をもたらす被曝量の閾値について、次のように述べています。

実際に放射線を被ばくした人々の実際の疫学データに基づいて、生涯における、自然放射線による被ばく以外の被ばく量が100ミリシーベルト未満で、健康上の影響が出ることは科学的には確かめられていません。

100ミリシーベルト未満の低線量による放射線の影響

やや難しい言い回しではありますが、要するに・・・

・総被曝量が100mSv以上になると、健康被害をもたらす可能性がある。
・100mSv未満の被曝量が健康に悪影響を及ぼすとするデータはない。

というのが、現時点の結論であるようです。

100mSv未満の被曝を「健康には一切、悪影響を及ぼさない」と結論づけるのは早計かもしれませんが、過度に心配をする必要もないと言えるでしょう。

自然界からの放射線による被曝とは?

放射能や放射線というと、レントゲンやCTなどによる「医療被曝」をイメージする人が少なくないでしょう。
しかし私たちは、自然界からある程度の放射線を、日常的に浴びています。

宇宙からの宇宙線による被曝。
地面からの自然放射線による被曝。
動植物を食べることや、呼吸による内部被曝。

こうした「自然界からの放射線」の被曝量は、日本においては年間1mSv、世界全体の平均では年間2.4mSvと言われています。

健康診断の胸部レントゲンやバリウム検査の被曝量はどれくらい?

会社勤めの人であれば、毎年実施しているであろう健康診断(集団健診)。
健康診断での胸部レントゲン検査(胸部撮影)や、バリウム検査(胃のX線検査)においては、放射線の被曝を避けられません。

ではこれらの放射線検査の被曝量は、一体どれくらいでしょうか?
具体的な値を、例として見てみましょう。

胸部撮影・・・0.2mSv/回
胃のX線検査・・・3-5mSv/回

健康診断のX線検査 – 北里大学病院

上記の情報を見るかぎり、胸部レントゲン検査(胸部撮影)の場合、500枚撮って、ようやく健康被害を考慮すべき段階(100mSv)に到達します。
年に一度の胸部レントゲン検査くらいでは、健康被害の心配をする必要はないと言って良いでしょう。

一方、バリウム検査(胃のX線検査)は、胸部レントゲン検査と比べると、被曝量が高めです。
25回ほどバリウム検査を受ければ、100mSvに到達することになります。

しかし、100mSvに達したからといって、必ずしも健康被害があらわれるとは限りません。
むしろ被曝の危険性より、胃の病変を早期診断できるメリットのほうが大きいというのが、多くの医療関係者に共通する認識と言えるでしょう。

ただ、胃の検査については「内視鏡検査」という選択肢もありますので、バリウム検査の被曝量が気になる方は、健康診断でのバリウム検査は辞退し、別途に内視鏡検査を受けると良いでしょう。

CT検査の被曝量はどれくらい?

CT検査は、体の状態を詳細に把握することのできる優れた検査ですが、健康診断などで行われる胸部レントゲン検査などと比べると、被曝量も大きくなります。

CT検査の被曝量は、検査に使用する機器や検査する部位により様々ですが、全身CT検査では、10mSv程度となることが多いようです。

また、CT検査には、「PET-CT」と呼ばれる、従来のCTよりも詳細な情報を得ることのできる検査もあります。
このPET-CTの被曝量については、次の通りです。

PET検査で使用するお薬(FDG)からの被曝線量は約4mSv(ミリシーベルト)です。ここにCTによる被曝が加わり、約15mSvになりますが、この線量で放射線障害が起こることはありませんので、ご安心下さい。

PET-CT健診 – 三重大学病院

上記の通り、CTは10mSv、PET-CTは15mSvと被曝量が大きいため、妊娠をしている女性や授乳中の女性は検査を避けるべきとされます。

同じ箇所を何度もレントゲン撮影しているが、健康への影響は?

病状を確認するため、同じ箇所を何度もレントゲン撮影するケースはよくあることです。
病院に行くたびにレントゲン撮影をし、被曝していることに、抵抗感や不安感を持ってしまう人も少なくないでしょう。

しかしそうしたレントゲン撮影は、放射線の被曝によるデメリットよりも、検査によって得られる情報のメリットのほうが大きい──と、専門家が科学的および医学的見地により判断した結果、行われるものです。
過度な心配は無用と言えるでしょう。

どうしても不安がぬぐえない、という場合は、その旨を正直に医師に打ち明け、安全性を確認することのできる数値や事例などのデータを示してもらうと良いでしょう。
納得できる説明を得られない場合は、セカンドオピニオンを検討することをおすすめします。

歯医者でのレントゲン撮影の被曝量はどれくらい?

歯医者さんの治療を受ける際に、多くの人が体験するであろう、レントゲン撮影。
外からは見えない患部の状態を確認するため、歯科治療においてレントゲン撮影は欠かすことができません。

歯科における放射線検査には、「デンタル」、「パノラマ」、「歯科用CT」の3種類に大別されます。
それぞれの特徴と被曝量は、次の通りです。

デンタル

歯科において、もっとも頻繁に行われる放射線検査が、この「デンタル」です。
ごく狭い範囲(特定の患部)を対象とし、撮影を行います。
被曝量はごく僅かで、0.004~0.02mSv程度です。

パノラマ

口の中全体を対象としたレントゲン撮影です。
被曝量は0.01~0.02mSv程度です。

歯科用CT

前述のデンタルやパノラマのレントゲン撮影は、平面的な、すなわち二次元的な情報しか得ることができません。
しかし歯科用CTを用いれば、立体的な、すなわち三次元的な情報を得ることができます。

根管治療(歯の根の治療)や、インプラント手術など、治療前に患部の詳細な情報を得ておきたい場合に用いられる放射線検査です。
得られる情報量が多い分、デンタルやパノラマ撮影と比較すれば、被曝量も多めになります。

文部科学省が2009年に発表した「放射線と安全確保」という資料によると、歯科用CTにて顎全体を撮影する場合(直径23cm×高さ17cm)、被曝量は0.074mSvになります(撮影に用いる装置の種類によって、数値は増減します)。
撮影対象を顎全体ではなく、特定の範囲のみとすれば、被曝量もそれに応じて減少します。

歯科における放射線検査は、前述の胸部撮影(0.2mSv)胃のX線検査(3-5mSv)と比較すれば、総被曝量は格段に少ないのですが、被曝する面積が小さいというだけで、放射線を浴びる箇所の負担が小さいというわけではありません。

過度の心配は無用ですが、総被曝量の少ない歯科の放射線検査と言えども、短いスパンで歯科用CT検査を繰り返し受けたりすることは、明確な理由がない限り避けるべきでしょう。

参考:
歯科X線と被曝 – 平塚歯科医師会
歯科用CT – 恵佑会札幌病院

外部被曝と内部被曝の違いは?

被曝には大きく分けて、外部被曝内部被曝の二種類があります。

外部被曝は、X線検査などで放射線を浴びたり、放射性物質に汚染された場所の近くにいることで発生する被曝です。
内部被曝は、呼吸や飲食により、放射性物質を体内に取り込んだことにより発生する被曝です。

内部被曝は、放射性物質が体内に留まり、放射線を出し続けることから、外部被曝よりも被曝の影響が出やすいと考えられています。

特に、肺に放射性物質が付着すると、その放射性物質を体外に排出することができないため、長期にわたって放射線を被曝することになります。

安全な放射線量の基準を超えて被曝すると、どんな症状が出るの?

事故などにより大量の放射線を浴びた場合、次に示すような影響や症状があらわれます。

1000mSv・・・吐き気などの急性放射線症
2000mSv~3000mSv・・・発熱・脱毛・不妊など
4000mSv~5000mSv・・・半数の人が死亡
10000mSv以上・・・ほとんどの人は1~2週間の内に死亡

参考:放射線の人体に対する影響について – 重井医学研究所附属病院

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